美髪のシンデレラ~眼鏡王子は狙った獲物は逃がさない~
「あら、三神主任じゃない?」

瑠花が駅構内のコスメショップで外国製のヘアケア商品を手に取って眺めている時であった。

165cm、華奢だがメリハリのあるボディ。

肩まで伸びるフワフワヘアはライトブラウンで見るからに柔らかそう。

極めつけは色白の肌に薄めの唇だ。

クリクリおめめはまるで西洋のビスクドールのようだった。

彼女の名は狭間心晴(はざまこはる)。

そう、あの狭間課長の自慢の末娘で、穂積ソワンデシュヴの宣伝広報課長をつとめているキャリアウーマンでもあった。

彼女とは、狭間部長を通じて知り合ったとはいえ、開発した商品を宣伝、販売する過程ではかなりお世話になったことがある。

美しくスマートな物腰の彼女にかかれば、大抵の取引先の担当はgoサインを出してくれる。

彼女は、あの狭間部長の娘とは思えない人格者でもあり、瑠花は心晴をとても尊敬していた。

「心晴さん、ご無沙汰しています」

このところ瑠花が開発してきた商品のほとんどは、別の宣伝広報部の社員が担当してくれていた。

そのため、瑠花は長いこと心晴と接する機会がなかった。

「仕事が終わってもヘアケア製品を見てるなんて、どんだけ社畜なの」

フフフと笑う心晴はとても美しい。

正に、現代に生きるヨーロッパのお姫様と言った感じだ。

一方の瑠花はというと、口紅をつけただけのほぼノーメイク。

心晴の美しい花柄のワンピース姿と比べると、シャツにジーンズの瑠花は益々貧相に見えてかなり恥ずかしかった。
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