初恋エモ

「ミミミミミハラさん……?」


今私はミハラさんの温もりに包まれた状態。

ちょっと待って。鼓動がやばい! 早く離れなければ!


「美透ちゃん、俺さ……」


切なげな声が振動とともに伝わってきたため、抵抗をやめた。


「正直、透明ガールの評判が悪くなるよりも、前のドラムと比べられて劣ってるって言われたのが嫌だった」


鼓動を激しくさせつつも、彼の本音に耳を澄ませた。


「俺なんて所詮クソみたいなプライドの固まりなんだよ。チヤホヤされてすぐ調子に乗って、何かあったらすぐ逃げて。今までずっとそう生きてきた。だから辛い……でもこのままじゃ絶対後悔する」


ミハラさんがドラムを叩きたいと言った時のことを思い出す。

彼は彼自身と戦っているのかもしれない。


「……っ」


真剣な話をしているのに、ドキッと胸が高鳴った。

頭に添えられた手がすっと動き、私の髪の毛を撫でたから。


「ごめん、なんでもない。そろそろ帰ろうか」


腕の力がゆるめられ、慌てて私は彼から離れた。


どうしよう、絶対顔が赤くなってる! 暗くてよかった。


顔を軽く叩いて火照りを戻しているうちに、ミハラさんは立ち上がった。


「よし。美透ちゃんに嬉しいこと言われたし、もうちょっと頑張るか~!」


力強い声が、夜空に舞い上がった。


よかった。私なんかの言葉でミハラさんは前向きな気持ちになってくれた。

ドキドキしすぎてよくわかんないけど。


私はミハラさんを応援したい。

きっとクノさんも彼の努力を認めつつあるから。


< 155 / 183 >

この作品をシェア

pagetop