初恋エモ
「ミミミミミハラさん……?」
今私はミハラさんの温もりに包まれた状態。
ちょっと待って。鼓動がやばい! 早く離れなければ!
「美透ちゃん、俺さ……」
切なげな声が振動とともに伝わってきたため、抵抗をやめた。
「正直、透明ガールの評判が悪くなるよりも、前のドラムと比べられて劣ってるって言われたのが嫌だった」
鼓動を激しくさせつつも、彼の本音に耳を澄ませた。
「俺なんて所詮クソみたいなプライドの固まりなんだよ。チヤホヤされてすぐ調子に乗って、何かあったらすぐ逃げて。今までずっとそう生きてきた。だから辛い……でもこのままじゃ絶対後悔する」
ミハラさんがドラムを叩きたいと言った時のことを思い出す。
彼は彼自身と戦っているのかもしれない。
「……っ」
真剣な話をしているのに、ドキッと胸が高鳴った。
頭に添えられた手がすっと動き、私の髪の毛を撫でたから。
「ごめん、なんでもない。そろそろ帰ろうか」
腕の力がゆるめられ、慌てて私は彼から離れた。
どうしよう、絶対顔が赤くなってる! 暗くてよかった。
顔を軽く叩いて火照りを戻しているうちに、ミハラさんは立ち上がった。
「よし。美透ちゃんに嬉しいこと言われたし、もうちょっと頑張るか~!」
力強い声が、夜空に舞い上がった。
よかった。私なんかの言葉でミハラさんは前向きな気持ちになってくれた。
ドキドキしすぎてよくわかんないけど。
私はミハラさんを応援したい。
きっとクノさんも彼の努力を認めつつあるから。