初恋エモ

2






月日は経ち、暖房のぬるい空気が教室にただよう頃。


机と椅子だけが並ぶ、がらんとした教室内で、私は一人もくもくと課題のプリントと格闘していた。

赤点間近だったからちょうどいいや。よし、勉強頑張ろう。


まずは、現代文の問題から。

『下 人の行方は誰も知らない、の表現の効果を答えよ』


これは『羅生門』か。文章を読み、問題文の意図を考える。

しかし、すぐに集中力が切れて脱線してしまう。


えーと。

彼はこの世の不条理を叫ぶ、パンクロッカーになりました。なんつって。


「おい……この時代にエレキギターはないぞ。アホか」

「はっ!」


ふざけた解答をプリントに書いていると、見回りの先生からのツッコミが入った。

びっくりした。いつの間にいたの?


消しゴムでごしごししていると、先生はため息をつき、私を見つめた。


「家のこともあるだろうけど、お前は本当によかったのか? これで」


誰もいない教室を見回しながら、私は答えた。


「はい。しょうがないです」


今、クラスメイトたちは修学旅行中。

きっと沖縄でたくさんの思い出を作っていることだろう。


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