初恋エモ


真緒と母が寝静まった頃、一人コートをはおり、ベースを手にした。

土手の草むらに座り、右手で弦をはじく。


コンテストでは、私自信の実力不足も実感した。

曲は弾くことができるけれど、音を自由自在に操るまでに達していない。


「うーん、まだまだだなぁ」


普段はピックで弾いているため、指で弾くと弦ごとの音量がばらついてしまう。

曲をさらに良いものにするために、指弾きもマスターしたい。

弦を叩いてはじくスラップも取得しなきゃ。


ベースのターコイズブルー色が街灯に照らされ、つややかに光る。

ライブで作ったボディの隅の傷を「ごめんね」と念じ撫でてから、私は練習を続けた。


卒業するまでは、コピーバンドや知り合いバンドのサポートをやったりして、ベースの修行をしようと思っている。

まわりが驚くくらい上手くなれば、いつかまたクノさんと音楽ができるはず。

そう信じて、一年間を過ごすしかない。


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