初恋エモ


「美透……!」


母は私を探していたらしい。

マンションの近くの道で、懐中電灯を片手にした母と遭遇した。


気まずくなり、私は電柱の後ろに隠れたものの。


「夜分遅くにすみません、あの……」


クノさんは母と何かを話し込んでから、隠れていた私を引きずり出した。

そのまま私を母に引き渡して、帰っていった。


「そんなに大切なものとは知らなかった。ごめんなさい」


母はさすがにまずいと思ったのか、私に頭を下げた。


頭を下げた母は、思ったよりも小さかった。

そういえば、昔よりも痩せて弱々しくなった気がする。


一気に、罪悪感が込み上げてきた。


「私こそ、ひどい言葉を吐いてごめんなさい」


またバイトしてお金を貯めて、新しいベースを買うしかないか。

そう思いながら、母と一緒に家に帰った。


「……ただいま」

「お母さん! おねーちゃん!」


夜中なのに、真緒は私たちを寝ないで待っていた。


頭を撫でてから、ごめんね、と謝ると、

彼はわんわん泣きだしため、久しぶりに同じ布団で寝た。


「…………」


真緒の布団から、私の部屋の空っぽになったスペースを見る。


クノさんとの日々とともにあったベースが失われた。

その悲しみは消えない。


だけど、私に家族を捨てる勇気はなかった。


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