初恋エモ
好きなバンドのライブを見て、美味しいフェス飯を食べて、オブジェやポスターの前で写真を撮って。
自然とテンションが上がる。
次のライブまでの待ち時間。
「やばいです! 夢みたいです!」
ぴょんぴょん飛び跳ねながら、ミハラさんにそう伝えると。
「あはは、楽しんでくれてよかった」
と言われ、ぽんと頭をなでられた。ぼんっと顔が熱くなった。
ステージではサウンドチェックが行われている。
人気バンドの出番前のため、少しずつまわりに人が増えてきた。
時間があるためスマホをチェックすると、
『今日ミハラくんとデートなんでしょ? 頑張ってね!』
画面に映ったのは翠さんからのラインだった。
確かにデート、になるのかな。
でも目的はライブを見ることだって。落ち着け私。
ちなみに、翠さんは今クノさんの家にいるとのこと。良かった。
ミハラさんにも報告すると、
「そっか、上手くいけばいいんだけどね。クノも割と悩んでたし」
と言われ、
「クノさん、恋愛で悩むことあるんですか?」
と驚いてしまった。
「や、俺も相談されたのは初めてだよ。なんだかんだクノは翠ちゃんのこと大好きっぽい」
「あー確かにそんな感じしますね」
聞くと、最近翠さんが不機嫌すぎて困っているとのこと。
他の女子に誘われても全部断っているのに。どうしてかが分からないらしい。
葉山さんが言った通り、クノさんは不器用なんですね。意外と。
「それより美透ちゃんは大丈夫?」
「え。私ですか?」
「美透ちゃんもいろいろ思い詰めてる感じしたから」
訳が分からなくて、上目でミハラさんを見る。
ドキッとした。
ミハラさんが穏やかな表情で私を見つめていたから。