空~君は何者~
鏡に自分の姿が写らないのはとても変な気分だ。幼い頃に寝る時、電気を消した暗闇の中で目を開き見えない闇の中で見えない何かを探していた、その感覚によく似ている。どんなに必死に大きく目を見開いても世界は真っ暗で、もしかしたら自分は目が見えなくなってしまったのではないのだろうかと不安になった。幼い頃の僕にとって暗闇の見えない世界は恐怖だった。
「見えない」と「映らない」は似たような感覚だ。そこにあるはずの物が見当たらない。見えないものは「ない」ことと一緒なのではないだろうか。「空気」だって小学校の理科の授業で習っただけで実際に見たことがある訳では無い。どっかの誰かが見つけたから「空気」になっただけで、もしかしたら「空気」ではなく全く違うものだったかもしれないし、本当は存在しなかったかもしれない。