年上ダーリン、猫系につき溺愛中
> 恭平 サイド
俺の朝は早い。
とは言っても出勤は遅いけど。中学校の授業が終わるまで塾は自習室しか開いていないし、自習室の管理は別の大人がやっているので俺は大体湊と暮らすこのアパートを午後3時前に出る事にしている。
それなのに朝6時半起床とか馬鹿げてる。
俺の隣で眠る湊の半目の可愛い寝顔を見てから顔と歯を洗って、着替えてとりあえず軽い朝飯(コーヒー)。
寝室にあるパソコンディスクに向かったらテスト制作やテスト採点、授業で使うプリント作りや成績、宿題の採点……学校の先生よりかは仕事は少なくなったけど、やる事はわりと山積みだったりする。
湊と結婚する事を選び、約10年夢見た教師を2年で退職した後の進路を塾講師にした理由はただ1つ、湊だ。
『先生さ、わたしの1年の時の体育の成績知ってる?』
『え? ……いや、知らねーけど』
湊が中学を卒業した日。
3年の教室から離れた場所にいた俺を探し当てた湊は、俺と写真を撮ったあと唐突にそう言い出した。
『1だよ』
『………マジ?』
俺が2年3年と続けて湊につけた体育の成績は、前後期全て合わせて計4回、オール5。
俺が湊を好きだったからって差別でつけたわけじゃなくて、テストの成績も普段の授業もよかったからだったけれど、俺が赴任する前の成績……1。
『先生の授業大好きだったんだよね、楽しくて』
『……ありがとう?』
『大人も教師も勉強も嫌いだけど、先生と先生の授業は好きだったよ。先生よく俺嫌われ者だからって言ってたけど、恭平先生は最高の先生だから続けてね』
泣きそうになったのをよく覚えてる。