蛍火に揺れる
そしてあなたが産まれた


一月、半ばを過ぎた頃。

今日は妊婦健診の日だった。もう正産期を過ぎているので、一週間毎に病院に通院中。
お腹の子は信じられないぐらい大きくなって、今にもはち切れそう。
それに激しい胎動。たまに肋骨付近がぐっと蹴られて痛む。

私は疲れたと言わんばかりに、机の上に頭をつけて伏せている。
もう十二月に入った頃には、いわゆる後期悪阻がはじまってしまい…結局私が元気に動けていたのはたった三ヶ月。三ヶ月のみだった。
母曰く、その三ヶ月が私の人生の休暇らしい。これぽっちなのかとなんだか少し…空しい気がしている。



とは言え出産までのこれまでの日々は、何よりも充実した日々だったと思う。
電車に乗って近場の温泉などの旅行へ行き、誕生日&結婚記念日にはクルーズ船でのディナーデート。初めて東京で迎える正月は、あの混雑する浅草寺を手を繋いで歩いた。
そして日々の家事の中で、ベビー用品なども手作り。
およそ一ヶ月かけた大作、膝掛けにもなるくま耳のポンチョは、作りながら着てくれる日を思うと思わず頬が緩んだ。


もう出産予定日まで一週間。
あとは出てくるのを待つのみ。
待つのみ……と言うか…そろそろ出てきてもらわないと、困る状況になっている。
< 129 / 153 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop