蛍火に揺れる
それから三週間後。
私は地元の駅に降り立った。
東京から飛行機と電車を乗り継いで四時間以上。ここに来るまでも一苦労だ。
「へぇ…なんか『田舎の駅』って感じだねー」
そう呑気な声を出している隣の人物は、勿論ノリ君だ。
確かに自販機が一つあるだけの、ホームには屋根もない小さな小さな駅。ホームから見えるのはそり立つ山のみ。勿論駅員は居らず無人駅である。
「ちなみに…あと歩いて四十分かかるから」
「よ、四十分……」
とは言え、我が家はこれでも近い方である。
奥の集落の方なんか、最寄り駅まで徒歩一時間。バスも廃線になり通っていない。
いつもなら母か弟に迎えにきて貰っていたが、さすがにいきなり対面は…と断っていた。
私たちは一つしかない改札を抜けると、早速山道を登り始める。
舗装されてはいるが、車がすれ違うことすら苦労する細い、細い道。しかも季節は梅雨前の暑い時期。肌にもわっとした空気がまとわりついて仕方がない。