蛍火に揺れる
でもノリ君は、そんなのをもろともせずにしれっと答える。

「正直お恥ずかしい話ですが、一目見た時から気になる存在でした。
 そして一緒に仕事をしていくに連れ、沙絵さんのひたむきに仕事を頑張る姿勢や、どんな立場の人であれ忖度をしない、自分にも妥協せずに厳しい姿勢で物事を取り組む姿を見て、更に好きになりました」


あくまでしれっと、当然のように答えるノリ君。
何という、用意されていた台詞をなぞるという感じではなく、ちゃんと心を込めて伝えようとしているのだが、あまりにもすらすらと出てくるのに戸惑いを隠しきれない。私の方が。

それはお父さんも一緒らしく、目の奥で『うちの娘がそんなはずはない』という無言の訴えをしてるのがよくわかる。いや…でも酷くないかこの親父。

「そうかい。それは自分の娘として誇りに思う」

いや、思ってないだろ…と私は密かに突っ込む。

「それで、君は……沙絵との将来はどう考えてる?」

「ちょっとおと…」
「沙絵ちゃん」

いくらなんでも、そんな話を今するのは失礼じゃないか。
止めようと立ち上がろうとした私を、ノリ君が制止した。

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