蛍火に揺れる
「ねえお父さん、思ったより頼りがいがありそうで、いい人そうじゃないの」
お母さんがお茶を持って現れて、一人一人に配りながらそう言った。
相変わらずお父さんは、黙ったままノリ君を見つめている。
「ええっと…江浪君と言ったかい?
君は沙絵よりも年下だと聞いているが?」
父よ、ようやく口を開いたかと言えばそれかい。
「ええ、はい。沙絵さんとは二つ年が下になります」
「職場の後輩だと聞いているが?」
「はい。入社当時はマーケティング部に所属しておりまして、その時の教育係が沙絵さんでした」
ノリ君を助けるために「一応この人移動して出世して、今は私の同期の上司になってる」と説明する。これまでの彼の経歴なども。
しかし見定める父の目は変わらずに、余計に疑り深い目をしている。
これは、あれだな。
ノリ君の経歴や人格の疑いじゃなくて…どちらかと言えば「なんでうちの娘なんだ?!」という疑いの目だな。
正直そんなの…私が知りたいわ。
「それで、君はどうして沙絵を選んでくれたんだ?」
身を乗り出し気味で聞くお父さん。さすが元校長、さっきよりも圧がすごい。