雪に咲く華

真side

一体何だったんだろうな。

幹部室へ向かいながら思い出すのはさっき葵が零した言葉。
懐かしさと寂しさみたいなのが混ぜこぜになったような声だった。


「おつかれ。葵ちゃんは?」

「下っ端たちと遊んでる」


葵は来てすぐ、2階には行かないと言い、さっさと下っ端たちの方へ行ってしまった。


「そっか。帰りもちゃんと送って行ってあげてね?」

「分かってる」

「なあ由希。聞きたかったんだけどさ、どうしてあの女を倉庫に連れてきたんだ?
あいつ怪しいんだろ?」


確かに普通情報が掴めないからって倉庫に連れてきたりしねえ。もしそいつがスパイだったら全て筒抜けになってしまうからな。

俺も颯が言ったことが気にならなかったわけじゃねえし、寧ろ葵と話してみて疑問が大きくなった。
だが、由希と、何より永和がすることなら大丈夫なんだろう。


「実のところ本気で疑ってるわけじゃないんだよ。気になるのは本当だけど、スパイかもって心配は元からしてない。
ただ、ああいう理由でも付けないと彼女は多分ここに来てはくれなかっただろうからね。
で、葵ちゃんを連れてきたのは永和が興味を持っちゃったからなんだ」


永和が?なんで?


「俺あいつに、葵に会ったことある、と思う」

「何だよその曖昧な感じは」


颯が永和に突っ込む。俺も同感だな。

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