雪に咲く華
靴を履き替え、昇降口を出ようとした時、物陰から伸びてきた手に腕を掴まれた。
「おい、倉庫行くぞ」
そのままぐいぐいと引っ張られる。
「落合くん、離してください。ちゃんと倉庫には顔出しますから」
「お前歩いていく気だろ。それじゃあ時間がかかりすぎる」
「他にどうやって行くんですか!?」
「俺のバイクに乗っけるんだよ。由希からそうしろって言われたしな」
相原先輩か。怖くはないけどあの目で見られるのは嫌だなぁ。あと作り笑いも。
とりあえず引っ張るのをやめてもらい、大人しく後を付いていくと、駐輪場に大きなバイクが停めてあった。
落合くんは私にヘルメットをかぶせ、抱っこしてバイクに乗せてくれた。たぶん乗れないと思ってしてくれたんだろうけど、なんかすごく照れるなこういうの。
落合くんもバイクに跨り、私が諦めて腰に腕を回したのを確認すると、ゆっくり走らせ始めた。
すごいスピードで流れていく景色。体に当たる風。久々の、バイクの感覚。
「やっぱ気持ちいい」
つい零れた独り言。自分でも聞き取れないくらいの小さな声。
だからまさか、落合くんに聞こえていただなんて夢にも思わなかった。