雪に咲く華


「すみませんでした...」

「ん、無事ならいい」


今度はすごく優しい声と手つきで頭を撫でてくれた。もう怒っていないからと安心させるような手つき。そして、


「葵」

「はい」

「かき氷好きか?」

「はい?え、あ、好きです」

「そうか。じゃ、行くぞ」


いきなり手を引かれて少し驚いた。向かってる先は多分出店が並んでる所。たこ焼きに串焼き、アイスクリームといろいろある。


「何味がいい?」

「え?」

「かき氷」


気が付けばかき氷屋さんの真ん前で、先輩が私の方をじーっと見ている。


「じゃあいちごで」

「いちごとメロン1つづつ」


もしかして、元気づけようとしてくれたのかな。お店の人から受け取ったかき氷を黙々と頬張る先輩を見て、ふとそう思った。

あまり表情に出ないからわかりにくいけど、少し不器用で、本当に優しい人なんだろうな。


「どうした?」

「いえ、何でもありません」


少し見すぎちゃったか。不思議そうな目をする永和先輩に笑って返し、私も自分のかき氷を食べ進めた。


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