雪に咲く華
葵ide
夜。
街には不良たちがたむろし、一般人は敬遠したがる時間帯。
私はパーカーに半ズボンとスパッツ、スニーカーという黒一色の動きやすい格好で人目のない路地裏を歩く。
大体こういうところで行われる定番と言えば闇討ちだ。
耳をすませばほら、いくつかの悲鳴が聞こえてくる。
物陰から覗いてみると、大柄の男5人がまだ少年らしくあどけない顔をした男の子を囲んでいるところだった。
「あの子たち、双龍の...」
倉庫で何度か話したことがある。まだ中学生で、最近加入したばかりだったはずだ。
いきなり出会えたのは僥倖、なのかな。
そっと後ろから近づいて、一番手前のやつの意識を静かに刈り取る。同時に囲まれていた子たちを思いっきり引っ張って、背中に隠した。
「え?」
「なんだてめえ」
なんとテンプレ通りのセリフなんだろう。マンガみたいな反応にちょっと感動を覚えた。
男たちは見事なまでに顔を真っ赤にさせて、今にも殴り掛かってきそう。
それでいい。ターゲットが私に変わった。
「君たち、走れるか?」
「は、はい」
「なら振り返らず、まっすぐ大通りまで行きなさい」
「でも...」
「ここにいられても足手纏いだ。早く!」
少し殺気を込めて脅すように言えば、男の子たちは一目散に駆けて行った。
さて、これで不安要素は消えた。残るは獲物に逃げられ怒り狂ったこいつらの後始末だけ。