追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました2
 胡乱な目を向ける俺に、少し離れた場所から俺の瞑想を眺めていた性悪オオカミは、ビクンと肩を跳ねさせて、バツが悪そうに目を明後日の方向に泳がせた。
『ふふふ、たぶん兄様に指導は向かないと思うよ』
『どういうことだ?』
『前に僕が、どうやったら変化できるのって聞いたら、生まれつき当たり前に出来ていたから、意識したこともない。強いて言うなら、呼吸するのと同じだって言ってたもの』
 俺の疑念には、背中からチビオオカミが兄に代わってカミングアウトをしてみせる。
 なんということだ!? とんだエセ指導もあったものだ!
 やはり奴は、生涯の友(ルビ・ライバル)などではない。奴は性悪オオカミで十分だ――!!
『それじゃあ、次は人型になってみよう』
 おっと、いかん! 今は性悪エセ師匠になど、構っている暇は無い――!!
 背中からあがった声に、俺は弾かれた様に目線を性悪オオカミからチビオオカミ、改め、師匠へと巡らせる。そうして尊敬を篭めて、師匠を仰ぎ見た。
『人型になるときはね、毛皮を脱ぐ感じを想像してみて?』
 ……よし!
 言われるがまま、想像の中の毛皮を勢いよく脱ぎ去れば――。

 ――ポポンッ!

 小気味よい破裂音の後、俺は二本の足で大地を踏みしめていた。

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