追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました2
 っ! 新たな師匠は伊達ではない――!
『うん! 上手上手~! 念の為、もう一往復いくよ? ふわふわの毛皮に包み込まれる感じだよ』
 俺は師匠の言葉通り、再びの変化に意識を集中させた。

 ――ポポンッ!

『すごくいいよ、上手~! それじゃあもう一度、今度は毛皮を脱ぐ感じだよ』

 ――ポポンッ!

『すごいすごい! 完璧じゃない! ……って、あれ!? ところで、服はどこいっちゃうの?』
 歓喜から一転、俺の全裸に気づいた師匠が、怪訝に首を傾げて問うが、むしろ消える衣服の行方に関しては、俺の方が聞きたいくらいだった。
「……おい師匠、どうしたら服付きで変化できるんだ?」
『え? そんなの僕、しらないよ。だって、服消えたことないし』
「……」
 すっぽんぽんのまま、一縷の望みを託して尋ねた俺に返されたのは、無情な一言だった。
 ……とにもかくにも、俺の十七年にも及ぶ苦悩の日々は、小さな師匠の指導により、一応終止符を打った。
 相変わらず着ていた服は消えてしまうが、俺は今宵、変化のコントロールをマスターした――。
 口にするまでもないが、奴に対する評価は性悪オオカミでしっかりと定着した。

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