かすみ草揺らぐ頃 続く物語 ~柚実16歳~
 視聴覚室内は、あちこちで塊ができていて。
 部内バンド、とでもいうのだろうか。
 いくつものバンドが各々でセッションしていた。
 一緒に視聴覚室内に入ると、純はおもむろに背負っていたギターを出し、部屋の片隅で個人練習を始めた。
 その周りには、髪の毛つんつんの圭吾先輩――そして。
 変わらず、吊り目気味の見た目だけはクール王子、瞬がいた。
 ――瞬の姿を、久方ぶりに見て、こころ動かなかったと云っては嘘になる。
 身体の交わりさえしたのに、最近はこころどころか、ちっとも交わりがなかった。
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