かすみ草揺らぐ頃 続く物語 ~柚実16歳~
 面白いから、このまま放って行ってしまおうか。
 一瞬そう思ったけれど、風邪をひいてしまっては可哀想だと思い直し(また、先生の運転する車がないと、私は帰れない)先生を揺すり起こした。
「ぬぬっ。車に戻るぞ」
 先生は飛び起きて、私の手を引いて走り出す。
 全速力で走り、駐車場まで来ると、先生はすぐに車のドアを開けて中に入れてくれた。
「シート濡れちゃう」
「いいよ、あとでクリーニングするから」
 そう言われたので、私は素直に濡れた服のまま助手席に座った。
 先生は後部座席からタオルを出してくれて、私のあたまをまず先に拭いてくれる。
「先生もびしょびしょ」
 私はタオルを取り返すと、先生のくしゃくしゃの髪の毛をタオルドライした。
 ゴゴゴゴ――雷鳴がさっきより近づいている感じがした。
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