かすみ草揺らぐ頃 続く物語 ~柚実16歳~
「えっ!? 見られてた!?」
 そう叫んだ。
 高野先生と海へのランデブーのことで、私が声を上げたわけではない。
 なっちゃんが吠えたのだった。
 ここは、うちの学校の食堂。
 夏休み中だから、学食も売店もやっていない。
 私たち――弓佳となっちゃんの3人――は、自販機のジュースを飲んでいた。
 例によって、夏休みの独特の空気のなかの学校。
 開け放した窓から、爽やかな風が吹いてくる。
 私たちが今話していることは、全然爽やかではないけれど。
「しかと見ましたよ、わたしゃ」
「気づかなかった――」
 私は、先日なっちゃんとハゲ親父が抱き合っているのを目撃してしまったことを告げた。
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