かすみ草揺らぐ頃 続く物語 ~柚実16歳~
「今すぐにじゃなく、高校卒業する頃でも――」
「あ~、呆れた!」
 私は不意にくるりと身体を捻り、先生に向き直る。
「何なの? どうしてそこまで結婚にこだわるの? 私じゃなくて、誰でもいいんじゃないの? ってか、先生はまだ元カノのこと引きずってる。あいつが結婚したんだから、俺もして、幸せなところ見せてやるってのが肚にあるんじゃないの?」
 図星だったのか、言われてカッときたからなのか、先生は私を押し倒した。
「……私とヤッてる時、彼女のこと一ミリも思い出さないんだったら、いいけど」
 先生はじっと私を見、そして私の上に覆い被さり、抱きしめた。
 襲う……でもないようだった。
 先生は、肩を震わせて静かに泣いていたのだ。
 私は少し驚いて、そしてそっと背中に手を回し、撫でた。
「……ごめんな……」
 涙声で先生は言った。
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