かすみ草揺らぐ頃 続く物語 ~柚実16歳~
 純は、うつむいて、何も云わない。
 うつむいて、ただうつむいて。
 私は、何も言えずに、彼の動向を見ていた。
 すっ、と純が動いた。
 そう思った刹那。
 純が、高野先生につかつかと歩み寄り、そのまま。
 がつっ……と、頬を殴った。
 先生は、茫然とした顔をした。
「こいつに、火遊びなんて言い方させるようなつきあい、するな。つきあうならちゃんと、本気でつきあえ」
「……」
 高野先生は、呆気に取られて、そして、笑った。
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