かすみ草揺らぐ頃 続く物語 ~柚実16歳~
 私の収まるべきところは、高野先生のところじゃない。
 この、冷たくて力強い、純のところなのだ。
 私は、そう思うと、高野先生の引く手をふりほどいた。
「――ありがと」
 私は二度、そう言うと、先生から顔をそむけ、純の背中を追った。
 私は、何を寄り道していたのだろう。
 こうして、引いてくれる手があるのに。
 私には、純というひとが、大切なひとがいるというのに。
「オマエ、何考えてる」
 廊下をひとしきり歩いたあと、純は私の方を向き直って言った。
「え」
「どうして、高野なんかと。別の男と」
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