かすみ草揺らぐ頃 続く物語 ~柚実16歳~
「そうそう。物理が好きになるまじないだ」
「おまじないだなんて、小中学生じゃあるまいし……」
「気の持ちようだよ」
「物理なんて、始めた春から苦手だって言ってるじゃない」
 タメ口になってしまうのは、あの夏のアバンチュールの名残か。
 だけど私は、高野先生にも恋心は抱かなかった。
 瞬でも、高野先生でもない。
 私が好きなのはやっぱり純だと思い知らされる。
 だって、今でも彼が校舎のどこにいるのかさえ気になっている。
 純、という名前をこころに浮かべて、胸が動かされる。
「先生、私、純と同じ大学行けるかなぁ」
「行けんじゃないの」
 先生は腕組みをして、軽く応える。
「テキトー」
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