かすみ草揺らぐ頃 続く物語 ~柚実16歳~
 私は言われた通りにテキストに鼻を寄せる。
「そして、深呼吸」
 すーはー、と私は鼻で呼吸する。
「……紙の匂いしかしないんですけど……」
「物理、だーい好き」
 真顔で先生は続ける。
「は?」
「言ってみろ。物理、だーい好き」
「ぶ、つり……だーい好き」
「もっと大きな声で」
「物理、だーい好き」
「もっと感情込めて」
「物理だーい好き」
 そう言って、乗せられるがままに教科書を胸に抱いた。
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