かすみ草揺らぐ頃 続く物語 ~柚実16歳~
 歌詞のないメロディに、ハミングを乗せて彼は歌い始めた。
 どこか北欧の、雪の積もった酷く寒い景色に、ひとの暖かさを感じるようなメロディだった。
“黒沢は想像力があるから、大丈夫だ”高野先生はそう言ってくれた。
 何を見てどうそう思ったのか解らないけれど、先生はちゃんとひとを見ている。
 私は、純のために詩を書きたい。
 ずっと力になりたい。
 私はそう思いながら、純から産まれる音楽に、陶酔していた。
 普段は朴訥とした低音ボイスなのに、歌う時はハイトーンクリアボイスになる。
 キラキラしていて、氷の膜のようで、大切に扱わないと壊れてしまいそう。
 そんな純の歌声が好きだ。
 純が、好きだ。
 そして彼が歌い終わると、私は涙していた。
「美しい」
 そう、言葉がぽろりと零れた。
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