うるせえ、玉の輿。


***



『ああ、お化け屋敷の子じゃん』
ピカピカで艶々のランドセルが、申し訳なさそうに右肩にかけられている。
靴も、小学生に人気の俊足っていう履くだけで速くなるって噂の靴。

服だってそこら辺のワゴンセールじゃ売ってない。馬に乗った人間のロゴマーク入りのプロシャツ。
そんな子が、鼻血をワイルドに袖で拭いていた私を覗き込んだ。

向こうは六年生で私は三年生だったと思う。

『知ってるし。あんな家、お化け屋敷って言われて当然だし』
『昨日もすげえ音がしたけど、大丈夫なの?』

まだオネエに目覚める前の業平は、私を心配してくれる目がキラキラ宝石みたいで、王子様みたいで格好良くて息をのんだのを思い出す。
頭のてっぺんからつま先まで、大切に育てられた、幸せなお伽話の中の王子様みたい。

『お金を盗んだら、殴られたの』
『盗んだの?』
『給食費がもう六か月も払われてないって、先生が言うからさ。じじいの財布からお金盗んだら、足りねえの。だから足りねえだろうがってビール瓶で頭殴っても死ななくて、逆に殴られたの』
『何してんの。君、女の子でしょ。危ないことしたら駄目じゃないか』
『でも抵抗しないで殴られてばかりじゃ、お母さんみたいに目にけがして病院から出られなくなるもの。少しでも弱みを見せたら駄目なの』
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