ねえ、理解不能【完】
歪んでいた千草の顔が、ふといつも通りの無表情に戻る。
私、間違えたんだ。不正解だった。
ようやくそれを悟った。
千草が私にぶつけた言葉を思い返す。
仕返しなんて、そんなつもりじゃなかった。
それに、おんなじ気持ちだって思ってたのは、私だけだったんだね。千草は私のこと、いつから嫌だったの。そんなに、性格悪いかな。
ーーいつから、私は間違ってた?
「….....」
私は千草から目を逸らして俯く。
そうする他になすすべがなかった。
「......青、ごめん」
千草の掠れた声が、頭の上でする。
私はうつむいたまま頼りなく首を横に振った。
謝られても、もう分からない。
「俺のほうが性格悪い。でも、今、青と一緒にいたくない」
頑なに言わなかったくせに、はじめて自分の意思を真っ直ぐに伝えてきた千草に、わたしは顔を上げることができなかった。