ねえ、理解不能【完】
もう、千草の前では泣かない。
絶対、泣きたくない。
じんわりと目の淵に染み出したのは、涙じゃなくて汗だ。
千草、今、どんな顔で私の背中を見てる?
......ううん、どんな顔で見ててもいいよ。もう、どうでもいい。
私は一刻も早く千草の前から消えたくて、走った。
とにかく夢中で、横断歩道を周囲を確認せずに渡ろうとする。
そうしたら、
プップーーーッッ!
けたましく鳴ったクラクションの音。
ちょうど車が右折してくるところで、ぶつかりそうになってしまった。
危機一髪でぶつからなかったけれど、車の中の人にすごく睨まれてしまって。
ついに涙が溢れてしまう。
なんで世界ってこんなにもうまくいかないんだろう。
何もかも私の味方をしてくれない。
そんな私の姿がまだ後ろから見えていたのか、
「気をつけろ!!」
千草の大きな声が聞こえる。千草って朝からそんなに大きい声も出るんだって驚いたけど、私は無視して走り出す。