ねえ、理解不能【完】
「広野みゆちゃんも、久しぶりだね」
上手に言えたと思う。笑顔の仮面は今にもはがれそうだけど、頑張ってる。
広野みゆちゃんは天使みたいに頷いたあと、視線を私とゆうの繋がれた手にうつした。
「青ちゃんって、やっぱり川瀬君と付き合ってるんだねえ」
「え、あ、うん。そうなの」
「お似合い。ね?ちぃくん」
千草の腕にすり寄って笑いかけた広野みゆちゃん。暑いの苦手なくせに、千草は拒まずに受け入れて。
モヤモヤ、するのは気のせいだ。
こっそり千草に視線を向けたら、千草の目線はしっかりと私とゆうの繋がった手の方に向けられていた。
それから、ゆっくりと視線がのぼって、一瞬だけ目が合った。掠めるような一瞬。
その一瞬で、力がこめられたゆうの手を離したい、なんて思ったのは、きっと暑さとイレギュラーな状況による脳の誤作動。
千草は、広野みゆちゃんに視線を戻したかと思ったら、「そーだね」と全く思ってもなさそうな返事をした。
広野みゆちゃんは満面の笑み。
私は満面の作り笑顔。
千草は相変わらずの無表情で、いつも爽やかなゆうでさえ無表情だった。
この空間を端的に表すなら、気まずい の四文字が相応しいだろう。