ねえ、理解不能【完】
それから、気づいたら、ゆうの腕の中にいた。
抱きしめられている、と分かったのは少したってからで。
背中に回ったゆうの手。自分のものではない心臓の音。目を見開いたまま、しばらく息を止めていたけれど、首元に顔がうずめられて、ゆうの髪の毛が肌をなでて。
私は、おずおずとゆうの背中に手を回す。
その時ふわりと香ったゆうの香り。
違う。この匂いじゃない。だけど、もう、この匂いでいい。そう思ったら、なんだか泣きたくなった。
「ーーはやく、俺のこと好きになって」
耳元をかすめたゆうの声。
私は、答えられなくて。
頷くこともできなかった。
その代わりに、頰に生温かいものが伝って、驚く。
なんで、泣いてるんだろう。
涙の意味がわからなくて、だけど止まらなかったんだ。