ねえ、理解不能【完】
耳元によせられていた唇が、というより千草の顔が、ゆっくりとわたしの正面にまわって。
頬をなでていた右手はそのままで、千草の左手が首の後ろにさしこまれる。
それから、顔をわずかに傾けて、はじめから深く、唇が押し付けられた。
目を、閉じる。
暗闇のなかで、千草の唇の温度と、私に触れる手の温度を感じる。
ついばむようなキスに、どう答えるのが正解なのか本当はまだ全然分からない。
だけど、応えたくて、私も唇を動かしてみる。
ちゅぅ、と艶かしい音が鼓膜を震わせて、千草のシャツをぎゅっとつかむと、千草は一度私から唇を離した。
ほんの少しだけできた隙間のうしろで、私はゆっくりと目を開ける。
そうしたら、熱のこもった千草の瞳につかまって。
千草はぬれた唇をゆっくりとひらいて、「・・・苦しかったら、ちゃんと鼻で息して」と掠れた声で私に言ったかとおもったら、またすぐに唇を押し付けてきて。