ねえ、理解不能【完】
「・・・鼻で息してって言った」
「・・・今、鼻詰まってるし。・・・か、彼氏、ならそれくらい分かっててほしいんだけど!」
馬鹿みたいな嘘。
馬鹿みたい、本当に。
彼氏、って千草のこと呼んだ瞬間、キスで恥ずかしくなってたのに、さらに恥ずかしくなって。
ああ、もう逃げ出したい。
恥ずかしくて、泣きそうだ。
だけど、じわ、と涙が染み出しかけたとき、ふはっ、吹き出すみたいな、笑い声が聞こえて。
千草を見上げたら、つり目の横に小さな皺をつくって、笑うやつがいた。
「うん、ごめん」
そんなに反省してない顔で謝る人間なんていない。
それに別に、・・・嘘だし、謝る必要なんてないけど。
いつも不機嫌で無愛想な千草がこんなときだけ嬉しそうにしてるのがずるくてムカついたから、「許さないし」と呟いたら、千草は、私の髪をなでながら、口角をすこしだけあげた。
「・・・彼女なら、ゆるして」