ねえ、理解不能【完】
「青に言いたくないこともある」
「私は言ってほしいことしかない」
「……言ってもお前には分かんないの」
「聞いてから判断するもん!」
「ちょっとは自分で考えたら」
千草は何故か自嘲気味に笑って、絨毯の上に座った。ベッドには座らずに。また悲しい気持ちがプラスされる。
「…………」
「……っ、」
ピロリンッ、無機質な機械音が重苦しい雰囲気の部屋に響く。
突然のことで驚いた。
自分の携帯を確認したけれど、画面は真っ黒なままで。
ということは、千草の携帯だ。
絨毯の上。
千草の足のすぐ横に置かれた携帯が着信の画面になっている。名前じゃなくて携帯番号。私の知らない番号だけど、きっと女の子なんだと思う。それもまだ千草とLINEを交換していない子。
これまでも千草と一緒にいる時に電話がかかってきたことがあったけれど、全部女の子だったし、今回もきっとそう。
千草は着信音が鳴り続ける画面を見つめる。
伏せた目と横に結ばれた唇。どんな女の子のことを考えているのかなって、気になるような気にならないような。
……ううん、全然気にならないよ。
私はそれなのに千草から目が離せない。瞳の奥を探ってしまう。
電話、もしかして、広野みゆちゃん?
さっき仲良く話していたし、また話そうって優しい声で言ってたし。もう、いい感じなんじゃないの。