ねえ、理解不能【完】
「なんで電話でなかったの?」
「気分」
「電話だれからだったの?」
「…………」
「……ねえ」
別に気にならないけど、気にならないんだけど。
.......知りたい、ぜんぶ。
自分でもうまく理解できない変な気持ち。
急かすようにもう1度、ねえ、と千草に言ったらいままでずっと合わなかった千草の瞳がゆっくりと私を捉えた。
「青には関係ない」
関係ないーーグサリと何かが心に刺さる。
すごく悲しくて、嫌いな言葉だと思った。
「ないけど、だめなの?」
「だめ」
「……だめじゃないでしょ?千草の生意気」
「……本当は興味ないだろお前」
「興味ならあるよ!幼なじみじゃん!」
「そんなん理由じゃない」
ちょっと女の子の名前を口にすればいいだけなのに、どうしてそんなに渋るんだろう。
本格的に怒りモードが復活してきた千草にこれ以上聞いたらまずいと思ったから大人しく引き下がることにするけれど、頑なに電話の相手をいわない千草にわたしだって腹が立つし悔しくなってくるよ。
千草が目を伏せたタイミングで、せめてもの仕返しでばれないように大きく舌を出してやった。