ねえ、理解不能【完】
とはいうものの、このままこんな最悪な雰囲気のままではいたくないから、私が妥協してあげることにする。
むっとへの字に結んでいた唇をほどいて、嫌な空気を変えるような話題を探す。
.......そうだ。川瀬君のことを千草にお願いしてみよう。
共通の漫画の趣味をもつ人がいることを教えてあげたら、千草のテンションも少しは上がるかもしれない。
大きな期待をこめて口をひらく。
「千草ー」
「......なに?」
「あのさ、川瀬ゆう君、知ってる?」
千草をじっと見つめる。少しでも機嫌が良くなったところを見逃さないように。
そうすれば、もう大丈夫だ。
いつも通りになれるよね。
.......と思ったのに。
「(なんで、さっきより不機嫌なの?)」
眉をしかめて、さらに険しい顔。そんな顔をさせたくて言ったわけじゃないのに。
どうして?
全然分からなくて、途方に暮れる。