ねえ、理解不能【完】
「俺のを貸してほしーの?」
さすが、千草だ。
言いたいことは、ばっちり伝わっていた。
私が濁した語尾を補って、千草は、乾いた笑みを一瞬うかべた。何ひとつ面白くなさそうな笑みに、戸惑ったけど、そんなことは無視して言葉を返す。
「そう!そうなのっ、お願い千草。川瀬君には綺麗に使って言っておくから」
パチッと千草が弱い例のお願いポーズで必死に頼む。
別に川瀬君のためだしそんなに必死に頼むことでもないけれど、不機嫌な千草の前で、どうすれば正解なのか分からなくて。
それなのに、
「絶対、やだ」
.......見事に、断られてしまった。
お願いポーズが効かないなんて、千草も耐性がついてきた頃なのかな。
もっと簡単な千草がいいのに、面倒だ。
脳内で毒づいて、これからもうこのポーズはしないことに決める。
「なんで嫌なの?三人でいっぱい漫画の話できるんだよ?絶対楽しいよ!」
「楽しいのは、川瀬とお前だけだよ」
「そんなことないよきっと!本当は千草だってしたいんでしょ?」
「したいようにみえる?バカなのお前」
バカにするように口角をあげた千草に、少しむっとしてしまう。