ねえ、理解不能【完】
眉を寄せて難しい表情の千草と目が合う。
それから、千草は私に一歩近づいて、目を伏せた。
「.......帰らないって言った」
低くて、冷たい声だ。
救いもないような気持ちにさせられる。
言ったから、何?
私がお願いしてるのに、変わらないの?
「でも、一緒に帰りたいんだもん」
私は、うつむく。
千草の靴先が視界の端にみえる。
「俺はそう思ってない」
さっきから、本当に、何。
私の言葉を否定するだけで、帰らない、も、帰りたくない、も言わない。否定することで察しろっていうずるい言い方。
まるで傷つけることに逃げてるみたい。
もう、私、充分傷ついてるのに。
妃沙ちゃんが言った通り待つべきだった。
遅すぎる、後悔。
妃沙ちゃんにも合わせる顔がない。
「.......なんでなの、千草」
「なんでもだよ」
本当に、こんなの笑えない。
そんな時だった。