彼女は実は男で溺愛で
「美人の気まぐれに、弄ばれたのかと思いました」
誘っておいて来ない。
そんな失礼な態度も、美人なら許せそうだ。
実際、悠里さんが本当にここに来るかどうかは半信半疑だった。
「なによ。それ」
すごく美人なのに、クシャッと顔を崩して笑う彼女を見て、きっと外見だけじゃなく中身も綺麗な人なんだと思った。
「で、誰の声に色気があるの?」
「え、それは」
彼女は私の隣の椅子を引き、腰掛けた。
興味津々の顔をさせた、本人に打ち明ける居心地の悪さを感じつつも、口を開く。
「悠里さんの。だって適度なハスキーボイスが落ち着きがあって、色気もすごくて」
言われ慣れているだろうなと、思っていた私に反し、悠里さんは目を丸くして顔を隠すように頭をかいた。
それから、照れたように告げる。
「初めて言われたわ。貴重な意見」
「そ、そうですか? 大人の女性という感じがして羨ましいです」
ため息混じりに訴えると、悠里さんは苦笑する。