彼女は実は男で溺愛で

「私は、あなたも可愛らしくていいと思う。えっと、『なにちゃん』だったかしら」

「あ、私、市村史乃と申します」

「ふふ。史ちゃんね」

 悠里さんから『史ちゃん』と呼ばれると、くすぐったい。

「ね、史ちゃん。女性らしいメリハリがほしいのでしょう? 綺麗って作れるのよ」

 思わず目をぱちくりして、悠里さんをまじまじと凝視した。
 お肌もきめ細やかで、美しいなあ。
 そんなことを思いながら。

「ついてきて」と言われ、悠里さんの後に続く。

 こちらのビルは打ち合わせに使う会議室ばかりだと思っていたら、販売促進用にスタジオなんかもあって、新作のプロモーション撮影もするらしい。

「それで、モデルのための試着室とか、色々と設備も揃っていてね。これも、そのひとつ」

 1階の休憩室からエレベーターに乗り、地下に降りた。
 地下もあったのだと、知らなかった事実に目を丸くする。
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