彼女は実は男で溺愛で
午前中の予定は、会議だと伝えてある。
議事録作成の件も伝えたため、この後の私の予定を彼は知っているはずだ。
それとも、急ぎの仕事があるのだろうか。
染谷さんは私の荷物を横目で確認し、困ったように頬をかいている。
彼の指は当たり前だけれど、悠里さんと同じだ。
それなのに、彼の姿の時に見る指は長くて綺麗だなと思うのに、女性らしいとは思わない。
「綺麗な、指ですよね」
「え」
つい心の声が漏れて、慌てる。
「あ、いえ。私の手はコロコロした手なので、羨ましいなあって」
通路で立ち止まって話していたせいで、染谷さんの後ろに人が通ろうとして、彼は私の方へ一歩歩み寄った。
人を避けるために近づいた僅かな距離の差で、彼のイメージにぴったりの爽やかな香りが鼻をくすぐる。
女性の時はエレガントな匂いをさせ、どちらの性別にだって、私は敵わない気がした。
「匂いまで爽やかで、ちょっと嫉妬します」
染谷さんは面食らったような顔を一瞬見せ、額を覆うように顔に手を当てた。