彼女は実は男で溺愛で
「あの、すぐ終わるから、会議室にいいかな」
顎で指し示されたすぐ近くの会議室に入ると、私の後に続いて入室した彼は「はぁ」と大きなため息をついた。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃない。市村さんって、誰にでもそんな感じ?」
非難するような声をかけられ、縮こまる。
男性の姿をした彼に睨まれれば、いくら温厚な彼だろうと震え上がる気がした。
「あの、なにか失礼が」
「失礼というか。そうだね。悠里の時はこんな感じだった。ダメだよ。男を簡単に褒めたりしたら。勘違いされたら、どうする」
彼の言葉を何度か頭の中で反芻して、指の美しさと彼の爽やかな香りを褒めたことを叱られているのだと、やっと理解した。