彼女は実は男で溺愛で
村岡さん、こんなところで食べていたんだ。
初めて知る事実にぼんやりしていると、柚羽は村岡さんの向かいの椅子を引いた。
「一緒に食べてもいいですか」
「え」
私と村岡さんの声が重なる。
柚羽だけ、1人楽しそうに言う。
「だって史乃を心配する人は、悪い人ではないと思って」
ガタガタと椅子を後ろに引き、村岡さんは立ち上がると「私、馴れ合う気はないから」と、どこかへ行こうとしている。
すると、柚羽も立ち上がる。
「私、せっかく仲良くなれそうな人を見つけたので、諦めませんよ」
ニッと笑った柚羽に面食らいつつも、頼もしいなと思った。
「馬鹿らしい」
そう呟き、村岡さんは歩いて行ってしまう。
柚羽はめげずに、彼女と同じ行動をする。
村岡さんが会議室を出て行けば、柚羽も会議室を出て。
村岡さんがものすごいスピードで歩いていく後ろを離れず歩き、入って行った別の会議室に柚羽も入った。
「いい加減にしてくれない?」
不機嫌そうな声を出す村岡さんに、柚羽はあっけらかんと言う。
「諦めて一緒に食べてください」
立ったままの3人は、無言のまま立ち尽くす。