彼女は実は男で溺愛で

 マネキン改め、トルソーが並べられた部屋は壁側に扉がいくつもあった。
 開いているひとつから推測すると、試着室のようだ。

 なにより、驚いたのはトルソーは下着をつけて飾られている点。

 ここは下着を試着する、場所?
 疑問符を浮かべていると、里穂さんは口を尖らせて反論している。

「悠里は、堅いんだから。そんなんじゃ恋人できないぞ」

「余計なお世話」

 二人のやりとりは、仲の良さを感じる。

 里穂さんは、悠里さんの儚げな美人に対照的な、エネルギッシュで迫力のある美人。

 里穂さんは、私の頭のてっぺんから爪先までを観察した。
 つい何時間か前に悠里さんにもされ、1日に何度もこういう目に遭うとは。

 しかも、悠里さんとは違った美人の人にまで、体型をじっくり見られて。
 僅かにショックを受けていると、里穂さんは悪戯っぽく言った。

「悠里がメイクしてあげればいいのに」

「な、にを」

 焦っている悠里さんを見て、里穂さんは笑う。

「うそうそ。えっと、チビちゃんはこっちに来て」

「史乃です! 市村史乃」

「ハハ。史乃ちゃん。こっち」
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