彼女は実は男で溺愛で
試着室のひとつに招き入れられ、中に入ると扉が二つあった。
厳重だな。
その感想の意味をすぐに知った。
「さっ、脱いじゃって」
「へ」
「脱いで。すっぽんぽんね」
「ええー!!」
まだ脱いでいないのに、思わず両手を胸の前にクロスした。
「もー、ちょっとー! なにも説明してないわけ〜? 私だって暇じゃないのよー!」
試着室の外にいるであろう、悠里さんに里穂さんは抗議している。
「来た方が早いと思って」
あっけらかんと告げる悠里さんに、里穂さんは頬を膨らませる。
「ご、ごめんなさい」
私が拒否をしていい立場じゃないと悟り、小さくなる。
だからといって、煮るなり焼くなり、どうにでもしてください! と、素っ裸にはなれない。