彼女は実は男で溺愛で
「懐かしい。俺がまだ、入社したての頃に考えたノベルティもあるな」
「えっ、どれですか」
染谷さんの手の中には、可愛らしいリボンがついたヘアゴム。
ノベルティが付いた服の資料など、関連書類とともにファイリングされていたのは、decipherのイメージであるリボンが、そのままモチーフになっている。
リボン部分に金属の小さなハートのチャームが揺れ、それがまた可愛らしい。
チャームにdecipherと刻印してあるのも、すごくかわいい。
「わあ。いいですね。これ。男性が考えたとは思えない」
「ハハ。俺が『悠里さん』だって忘れているね」
「あ、そっか」
普通に悠里さんの話ができるのは、どうしてか嬉しい。
別の人のことを話すような、どこか不思議な感じではあるけれど。