彼女は実は男で溺愛で
過去のノベルティはお弁当箱にしても、エコバッグにしても、片手に収まる程度のサイズで渡せるもの。
そして、ノベルティほしさに服を買ってしまいそうなくらい、ノベルティ自体がほしくなるものだった。
「今回は冬物、ですよね。冬なら帽子とかマフラーとか可愛いなあ。予算オーバーかなあ」
帽子にマフラー、手袋。
冬らしい小物は、どうしても単価が高くなりそうだ。
だからといって、チープになってしまっては魅力は半減してしまう。
「チャーム。チャームはどうでしょう。ふわふわのもこもこした、ボンボン!」
興奮気味に提案すると、染谷さんは柔らかく笑う。
「擬音が多くて、連想ゲームみたいだ。丸いファーのことかな」
「そう! それです」
ひとり静かに仕事をしたかったはずが、染谷さんと仕事をするのは楽しかった。
期間限定ではなく、本当の上司が染谷さんだったらなあと少しだけ思う。
「それはよさそうだね。バッグにつけてもらえれば、decipherの宣伝にもなる。ひと目見てdecipherと分かる、形と可愛さにしないとね」