彼女は実は男で溺愛で

 そこまで話して、染谷さんはクシュンと男性らしからぬ可愛らしい、くしゃみをした。

「ごめん。埃に弱くて」

「埃が苦手ならマスク、あっ!」

 2人で顔を見合わせ、声が揃う。

「マクス!」

 綺麗にハモって、2人で笑い合う。

「マスクはいいかもしれないな。色も形もある程度自由だし、ロゴやマークも入れやすい」

「でも使い捨てになるのは、残念ですね」

「使い捨て、か」

 腕組みをして、染谷さんはなにかを考えている。
 組んだ腕の片方の指先を顎に当て、さながら探偵のよう。

 綺麗な指先が映えるポーズは、とても美しく、目を奪われる。
 私ってこんなに手フェチだったかな、と自分の嗜好に気づき心の中で苦笑した。

「企画書を出してくれないかな。ファーのチャームと、マスクの両方で。マスクは好評なら、販売する前提での展開も見込めると記載しよう」

「販売いいですね! マスクが可愛いと風邪の季節も楽しめそう」

「史ちゃんのアイデアだ」

「いいえ。染谷さんのくしゃみのお陰です」

「ハハ。違いない」
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