彼女は実は男で溺愛で

 過去のノベルティを片付け、棚にしまう。
 最後の1つを手を取ろうとして、染谷さんの手と私の指先が触れた。

「ごめんなさ、えっ」

 パッと離した手を、改めて捕まえられ、染谷さんを見つめた。
 彼と見つめ合って、目が逸らせない。

 どちらともなく近づいて、私は目を閉じた。

 優しく、唇が触れる。

 彼の手が背中に添えられ、力の抜けた体は彼にもたれかかるように預けた。

「仕事、しなくちゃ、ね」

 少し掠れた声は、ドキドキとした鼓動に重なる。
 彼の男性らしい爽やかな香りが、胸を締め付けて離さない。

 頬を手で撫でられるように、覗き込まれ、もう一度唇が重なって離される。

「好きだよ」

 甘く囁かれ、小さく頷いた。

「行こう。離せなくなってしまいそうだ」

 そう言って、染谷さんは私の手を引いて歩き出す。

 薄暗い地下の資料室。
 薄暗くても分かるくらい、彼の耳は赤かった。
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